SDE倍率法-基本
SDE倍率法 基本編 - 中小規模ビジネスの価値評価方法
スモールビジネス、中小規模の事業評価、株式評価として、SDE倍率法(SDEマルチプル)というのがあります。SDEとは、Seller’s Discretionary Earningsの略であり、直訳すると「売主裁量利益」ですが、意味合いは、「売主が自由に処分できる利益」です。「オーナー裁量利益」とも訳されるようですが、私は「オーナー残存利益」と訳すのがよいと考えています。簡単にいえば、オーナーの手残り、でしょうか。ただし、そこから法人税、所得税を払うこととなるので、オーナーの税引前手残り、というべきでしょうか。
SDEは、EBITDAと似ていますが、違いは、オーナーへの支払をEBITDAにプラスすることです*1。
SDE = EBITDA + オーナーへの支払(資金流出)オーナーへの支払とは、オーナーへの報酬*2はもちろん、例えばオーナーへの賃料の支払(事業用資産をオーナーが会社に貸している場合)なども含まれます。これらは、オーナーの裁量によって、金額を変更することができるものなので、それらオーナー裁量が可能な支出はEBITADAにプラスすることで、事業価値(株式価値)算出の出発点とする考え方です。
SDEの中から、オーナーは裁量的に自らへの報酬等を決定できるので、中小規模の事業が稼得するキャッシュフローの目安として適切である、という考えです。
SDEが3000万円の場合、その中から経営者Aは、役員報酬として1200万円とするかも知れませんし、経営者Bの場合は、3000万円すべてを役員報酬とするかもしれません。大企業と違って、役員報酬はオーナーの一存で決められるからです。
その事業の価値は、役員報酬を控除する前の利益3000万円で比較・検討すべき、という理由でSDEが使われます。
SDE倍率法は、買うほうの立場からみると、自分の働く職場をいくらで買うか、という見方になります。
例
オーナーシェフのレストラン、オーナーも現場にでる小規模工務店等を、同じくマネジメントプレイヤーとなる個人が事業や会社を購入する際に適合的な考え方です。SDE倍率とEBITDA倍率
事業の評価にあたり、SDE倍率とEBITDA倍率のどちらを使うべきでしょうか。EBITDA倍率が適合的
- オーナーは投資のみの役割、または、フルタイムではない経営活動に留まる
- 事業規模が大きい
SDE倍率が適合的
- オーナーもプレイングマネージャーとして、毎日の事業活動に不可欠な存在
- 事業規模が小さい
野村證券にも在籍していた投資家による解説
アレクセイ・ピコフスキー
- SDEは主に小規模なオーナー経営企業に用いられます。これらの企業では、通常、オーナーが1人おり、オーナーは日々の業務に深く関与しています。このような企業では、オーナーの報酬と裁量的経費が企業の財務業績に大きな影響を与えます。SDEは、オーナーが事業から得る総財務便益を包括的に把握できるため、小規模企業を評価するための頼りになる指標となっています。
- EBITDAは 、特にM&A(合併・買収)において、より大規模な企業を評価する際に一般的に好まれる指標です。EBITDAは営業収益性に焦点を当て、オーナー固有の調整を除外することで、現在の経営体制に左右されない事業の業績をより明確に把握できます。EBITDAは営業収益性の標準化された指標であるため、業界や地域をまたいだ企業間の比較が容易になります。
SDE倍率
一般的には下記のあたりでしょう。SDE倍率 | 2~4倍 |
EBITDA倍率 | 3~7倍 |
日本における利用
SDE倍率法は、アメリカでは盛んに用いられており、ポピュラーですが、日本ではあまり積極的には使われていないようです。[SDE倍率が日本で用いられない理由 Comming soon]