2023/09/10(日)財産評定-民事再生手続での公認会計士の役割

通用する財産評定-民事再生手続での公認会計士の役割

民事再生手続においては、手続の開始決定時の財産評定を実施する必要があります。
この財産評定は、公認会計士であれば誰でもできるものではありません。

なぜなら、民事再生における財産評定は、破産を前提とした評価なので、破産した時にどのようなことが起きるかを理解しておく必要があるのです。

一般の公認会計士・税理士は、継続している会社の会計は得意ですが、破産局面に詳しい公認会計士はとても数が少ないのです。

全体を俯瞰して評定する。

財産の評定といっても、一定の幅があります。
その幅の中で、どういう理屈で評価するかを判断するためには、その再生スキームまで見据える必要があります。

再生スキームによって、この資産は低め、これは逆に高め、など、戦略的に評定する必要があります。もちろん、合理的な範囲内の話であって、無理な評価をすることではありません。

そうすると、破産時の状況に詳しいほか、再生スキームにも詳しい公認会計士である必要があります。

評定は評定のみで終わらない

全体俯瞰の必要性はもちろん、財産評定における資産評価は、担保権消滅請求や別除権解除の交渉、資産売却における最低基準を画するなど、様々な局面で、その評定された数字が用いられます。
それらを理解し、想定されるあらゆる場面に通用するように、財産を評定する必要がああるのです。

事業再生に慣れた公認会計士

企業再生の分野は、特殊な世界です。
我々は、素人会計士に依頼して苦労している案件をたくさんみてきています。そうした案件に後から介入して、物事をおさめたことも一度や二度ではありません。

ポジショントークになってしまいますが、我々は関与した事業がスムーズに再生していただくことを心の喜びとして業務をしています。
企業再生になれた公認会計士をお捜しであれば、お気軽にお声がけください。

2023/09/03(日)民事再生手続の成功率

民事再生手続の成功率

こんな記事がありました。果たして本当か、検討してみましょう。
「民事再生法」適用企業 生存率26.7%、「再建型」が有名無実に
東京商工リサーチは、2000年4月1日~2022年12月31日までに負債1,000万円以上を抱え民事再生法の適用を受けた1万963社のうち、個人企業等を除く7,988社を追跡調査した。同一企業で事業継続が確認されたのは、26.7%(2,133社)と4分の1にとどまった。
さて、この「事業継続」の「確認方法」は、「同一企業での事業継続の有無」を測定したものです。
スポンサーがつき、事業譲渡されて営業が継続しているものは含まれません。

例えば、私が関与した(最後の清算人でもあります)リーマンブラザーズ証券は、この記事では「消滅」に区分されています。

確かに、法人としてのリーマンブラザーズ証券は消滅しました。しかし、同社の主要事業は再生手続申立後すぐに、別の証券会社に事業譲渡されました(ニュースにもなっています)。また、他の事業も再生手続の中で譲渡され、それぞれの譲渡先で事業は継続しています。

これは憂うべき事ではありません。民事再生手続を利用することを破産を免れ、事業は継続しています(さらには、同社は一般再生債権に対し、95%の配当率を実現しています。)。

そして、昨今の民事再生はスポンサー型のほうが多く、6~7割がスポンサー型であり、さらにその中の多くが、事業譲渡や会社分割によって事業が引き継がれ、もとの法人は清算するスキームが一般的に行われており、これは、"失敗"ではありません。事業は生きています。

この記事も決して"失敗"とは書かず、「消滅」という表現にしていますが、印象として失敗のように語られ、「私的整理が広がるなかで運用は曲がり角にきている。」という、ネガティブな方向性の結論を書いています。タイトルも「有名無実に」という用語で、あたかも民事再生手続が使えない法律であるかのごとくです。

民事再生法の運用が、最近は硬くなり、使い勝手が悪くなってきている、という批判もあり、私もそう感じることがありますが、決して、成功率が26%などということはありません。あまりにミスリーディングな記事といえるでしょう。

東京商工リサーチさんは、優秀な信用調査会社ですが、この記事は、再生手続を利用しようとする会社を躊躇させるのに十分なミスリーディングをしていると考えています。

もちろん、私自身が再生手続の専門家として活動していますから、一定のバイアスはあります。しかし、議論するならば、もっとニュートラルで、現実に即したデータで議論をしたいものだと考えます。

民事再生の成功率はこんなに低くありません。
そもそも「成功」の定義をきちんと議論したいものだと思います。
その上で、他の手続と平等な土俵で比較したいものだと思います。

記事の後段では、以下のように一応、私的整理と民事再生を比較し、民事再生のほうが選択肢としてよい場合もあるという文章はあります。
レピュテーションによる事業価値の毀損は避けるべきだが、私的整理で再建に伴うリストラや取引契約の見直しなどが頓挫すると、中長期的な企業価値は再生局面の初期に法的手続きを採っていた方が上回ることも想定される。
しかし、記事タイトル、論調の過半は、定義がおかしい「成功率」の用語を使用した、再生手続の成功率が低いことへの言及であり、フェアでない記事であると思います。

民事再生手続は、会社(法人格)を救済するための法律ではなく、その会社で執り行われている「事業」を救済する法律手続です。結果的に、会社(法人格)も救済することはありますが、それは本筋ではないのです。

だから法人格の「消滅」だけで、成否を判断すべきではないのです。

申立代理人・弁護士の方へ

慣れた会計士を右腕に

申立代理人様 (民事再生、会社更生、破産)

弁護士先生方が民事再生手続に慣れていても、会社・経営者は慣れていません。
私たちには、多くの弁護士の方を支えてきたノウハウがあります。
私どもは申立会社の中に入り込み、必要な資料を的確に作成いたします。

申立のタイミング、合理的な再生計画…先生方の右腕として会社を支える役目をいたします。

特に事前に資金繰りを精査しないと、再生スキーム検討や、先生方の報酬が払えるかどうかさえ不明なまま手続に突入せざるを得なくなってしまうこともあります。

民事再生に必要な日繰りの資金繰り表は、再生会社では難しく、慣れた会計士に依頼したほうが安心感があります。

企業再生の法律を理解し、きちんと実務ができる会計士をお捜しの方はどうぞご連絡ください。

資金繰り表(日繰り表)

再生手続には、申立後6ヶ月の日繰りの資金繰り計画表が必要となります。
これは、会社内部で作成している資金繰り表では足りず、再生独自の視点をもった資金繰り表が求められます。

将来の予測など難しいのではないか?

もちろん、完全な予測は無理ですが、合理的な仮定をおけば、実務上問題のない精度での資金繰り計画を策定することは可能です。

そして資金繰りがタイトな案件は、日繰り表を作成して、毎日のモニタリングが必要です。

日繰りの資金繰り表は、ただの計画というだけでなく、再生手続を進める上での重要な計器となり、羅針盤となります。

仮に資金繰りが持たなければどうしのげば良いか、余裕のある時でもどういう順番で払っていくか、どこにバッファーをみるか、民事再生手続になれた公認会計士にお任せください。

財産評定

 
財産評定は、破産実務を理解していないと売掛金の評価させできません。
当事務所は代表のみならず、再生手続を深く理解している公認会計士が在籍しております。

評定金額には幅があります。評定には戦略が必要です。

ただ機械的に評価するのではなく、全体的な視野で評価し、債権者に対し戦略的で、スキームに対し適合的な財産評定を実施します。

はじめての財産評定-会社版民事再生手続総合情報

スキーム構築

事業再生には、自主再建、スポンサー型の2類型がありますが、どちらも再生スキーム構築が必要です。

自主再建の場合には、今後の事業計画、債務免除益の処理、資産の評価損の処理など、単体法人であっても、きちんとスキームを組まないと、後日、思わぬ税金が発生したりします。

スポンサー型の場合は、事業譲渡、会社分割がメジャーですが、その法的選択だけではなく、支援金額の妥当性、調整条項、表明保証、人員の引継ぎ、残った法人の処理など、スキームを組んでおかないとスポンサーも巻き込んだ騒動に発展する可能性があります。

倒産局面では、平時のM&Aとは異なる配慮が必要です。

どうぞお気軽にご相談ください。

はじめての財産評定-会社版民事再生手続総合情報

企業再生:不利な契約を解除する

不利な契約を解除する方法/民事再生/会社更生

事業構造を改革しようとした時、仕入先や外注先との不利な契約を解除したい時があります。
例えば、一定量以上仕入れないと単価が高いとか、違約金が発生するなどです。
事業所の移転などに伴う、オフィスや工場の賃貸契約の解除による違約金も避けたいものです。

しかも、一方的な解約/解除の場合、大きな違約金が発生してしまい、そこまで踏み込めない場合があります。

他に有利な仕入先、外注先があるにもかかわらず、乗り換えができないことから、事業構造改革の支障となってしまいます。

民事再生法では、そのような違約金は、過去の原因に基づく債務として再生債権として処理することができます。

再生債権としてしまえば、カット後の弁済は必要であるものの、限りある弁済原資をほかの債権者と分け合うに過ぎないので、再生会社としては、前向き用の資金を使うことなく、処理することができます。
再生債権となる請求権-民事再生法84条

84条第2項第3号には、「再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権」も再生債権と明示されています。

再生債権ですので、議決権があり、カット後の一定額は支払わなければならないものの、当該違約金を全額払う必要はなくなります。

この不利益契約の整理機能は、私的整理にはない、法的整理ならではのものです。

私的整理だと仕入先、外注先は原則として手続きに取り込まないので、このような違約金が発生してしまうと100%払わなければならなくなり、前向きの資金繰りに、悪い影響を及ぼしてしまうのです。

事業の抜本的な改革をしようとしたときには、法的整理は強力な味方となってくれるのです。
取引先も巻き込む以上、その欠点だけでなく、利点も大きいものなのです。

泉会計事務所-民事再生、事業再生