SDE倍率の算定

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SDE倍率の決め方

理論的な決め方と経験則による決め方がありえますが、アメリカでは多くの事例が存在し、信頼できる相場があります*1

https://www.choicebizops.com/small-business-valuation/multiple-of-sde/
に参考となる目安があり、以下のとおりです。
SDE規模(年間)適用倍率レンジ
~100,000ドル未満1.2~2.4倍
100,000~500,000ドル2.0~3.0倍
500,000~1,000,000ドル2.5~3.5倍
1,000,000ドル超 (EBITDAへ移行検討)3.5~5.5倍
考え方からして、EBITDA倍率よりも低くなります。
事業の業種によっても変わりうることとなります。

SDE倍率法で算出された事業価値から、引き継ぐ有利子負債を控除して*2事業価値を算出します。
こちらの会社は、ローン審査用の評価もやっているようで、信頼できると思います。
SDE倍率の業界平均
弊社のSBA融資取引データベースによれば、小規模ビジネス全体のSDE中央値倍率は約3倍です。弊社が鑑定した取引事例では、全業種のSDE倍率レンジは約1.5倍~4.0倍(年間売上高5百万ドル未満の中小企業が対象)となっています。
Reliant Business Valuationの解説ページ
SDEは、中小規模の機械工場にとって最も一般的な指標の一つです。これには、利益に加え、オーナー報酬やその他の裁量的費用が含まれます。機械工場の場合、SDE倍率は通常2.0倍から3.5倍の範囲です。実際の数値は、収益の安定性、設備の品質、顧客集中度によって異なります。
Equitest
こちらの会社は建設会社だけでなく、他の業種のSDEも記載しています。
建設会社の SDE 倍率は通常、SDE の 2.15 倍から 2.85 倍の範囲です。
Peak Business Valuation

実践

私は、2~3倍を基本とし、そこに他の要因による調整を加えたりします。
どのようにしているかは企業秘密wwです。

*1 : とはいえレンジは広い

*2 : その他の調整項目もあります。

倍率の大小を検討する材料例

https://www.choicebizops.com/small-business-valuation/multiple-of-sde/ より

高倍率を正当化する事業属性

  • 安定した成長と収益性の実績
  • 10年以上の事業継続
  • 十分な有形資産価値
  • オーナーの引退売却
  • 不在オーナー体制
  • 安定した経営チーム
  • 長期的な優良従業員・顧客
  • 多様で広範な顧客基盤
  • 明確な競争優位性
  • 独自または排他的な製品
  • 明らかな成長機会または改善余地
  • 会計帳簿が極めて整備されている
  • 最新設備および優良な施設状態
  • 好条件のリース契約または不動産所有
  • 魅力的な立地
  • 高い需要の事業(製造、流通、BtoBサービス)
  • 有利なオーナーファイナンス
  • 売却動機が分かりやすい

低倍率を正当化する事業属性

  • 収益性の実績が不安定
  • 3年未満の事業年数
  • 有形資産価値がほとんどない
  • オーナーが業務に不可欠(専門職・コンサルティング)
  • 家族やパートナーの運営関与が大きい
  • 従業員数が少ない、または離職率が高い
  • 顧客基盤が狭く、一部顧客に依存
  • 市場参入障壁が低い
  • 明確な成長機会や運営改善余地なし
  • 会計記録が不透明
  • 設備が老朽化しており更新や多額の保守が必要
  • 資本再投資やメンテナンスが先送り
  • 施設が散在・運営に適さない
  • リース条件が不利
  • 魅力に欠ける立地
  • 需要の低い事業(小売、バー、レストラン、パーソナルサービス)
  • オーナーによる資金提供条件が不利、全額現金売却
  • 売却理由が不明確
上記は、調整項目の例ですが、事業やオーナーの役割をよく理解して合理的に専門家としての判断をする必要があります。

日本での相場

日本では信頼できる相場情報はありませんが、結局は買う人と売る人のせめぎ合いなので、アメリカの事例と大きくは変わらないとみています。
違いがでてくるとすれば、税制と融資の付きやすさ、であろうと考えています。

SDE倍率法-基本

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SDE倍率法 基本編 - 中小規模ビジネスの価値評価方法

スモールビジネス、中小規模の事業評価、株式評価として、SDE倍率法(SDEマルチプル)というのがあります。

SDEとは、Seller’s Discretionary Earningsの略であり、直訳すると「売主裁量利益」ですが、意味合いは、「売主が自由に処分できる利益」です。「オーナー裁量利益」とも訳されるようですが、私は「オーナー残存利益」と訳すのがよいと考えています。簡単にいえば、オーナーの手残り、でしょうか。ただし、そこから法人税、所得税を払うこととなるので、オーナーの税引前手残り、というべきでしょうか。

SDEは、EBITDAと似ていますが、違いは、オーナーへの支払をEBITDAにプラスすることです*1
SDE = EBITDA + オーナーへの支払(資金流出)
オーナーへの支払とは、オーナーへの報酬*2はもちろん、例えばオーナーへの賃料の支払(事業用資産をオーナーが会社に貸している場合)なども含まれます。これらは、オーナーの裁量によって、金額を変更することができるものなので、それらオーナー裁量が可能な支出はEBITADAにプラスすることで、事業価値(株式価値)算出の出発点とする考え方です。

SDEの中から、オーナーは裁量的に自らへの報酬等を決定できるので、中小規模の事業が稼得するキャッシュフローの目安として適切である、という考えです。

SDEが3000万円の場合、その中から経営者Aは、役員報酬として1200万円とするかも知れませんし、経営者Bの場合は、3000万円すべてを役員報酬とするかもしれません。大企業と違って、役員報酬はオーナーの一存で決められるからです。
その事業の価値は、役員報酬を控除する前の利益3000万円で比較・検討すべき、という理由でSDEが使われます。

SDE倍率法は、買うほうの立場からみると、自分の働く職場をいくらで買うか、という見方になります。

*1 : EBITADA同様、細かい算出方法の違いはあります。

*2 : 社会保険料負担も含む

オーナーシェフのレストラン、オーナーも現場にでる小規模工務店等を、同じくマネジメントプレイヤーとなる個人が事業や会社を購入する際に適合的な考え方です。

SDE倍率とEBITDA倍率

事業の評価にあたり、SDE倍率とEBITDA倍率のどちらを使うべきでしょうか。

EBITDA倍率が適合的

  • オーナーは投資のみの役割、または、フルタイムではない経営活動に留まる
  • 事業規模が大きい

SDE倍率が適合的

  • オーナーもプレイングマネージャーとして、毎日の事業活動に不可欠な存在
  • 事業規模が小さい

野村證券にも在籍していた投資家による解説

  • SDEは主に小規模なオーナー経営企業に用いられます。これらの企業では、通常、オーナーが1人おり、オーナーは日々の業務に深く関与しています。このような企業では、オーナーの報酬と裁量的経費が企業の財務業績に大きな影響を与えます。SDEは、オーナーが事業から得る総財務便益を包括的に把握できるため、小規模企業を評価するための頼りになる指標となっています。
  • EBITDAは 、特にM&A(合併・買収)において、より大規模な企業を評価する際に一般的に好まれる指標です。EBITDAは営業収益性に焦点を当て、オーナー固有の調整を除外することで、現在の経営体制に左右されない事業の業績をより明確に把握できます。EBITDAは営業収益性の標準化された指標であるため、業界や地域をまたいだ企業間の比較が容易になります。
アレクセイ・ピコフスキー

SDE倍率

一般的には下記のあたりでしょう。
SDE倍率2~4倍
EBITDA倍率3~7倍
SDE倍率の算出方法

日本における利用

SDE倍率法は、アメリカでは盛んに用いられており、ポピュラーですが、日本ではあまり積極的には使われていないようです。

[SDE倍率が日本で用いられない理由 Comming soon]

経験

私は、小規模事業者の破産前事業譲渡の価格の妥当性、小規模事業のMBO等において使うことがあります。結構、使える方法なので、もっと普及してもよいように思っています。

SDE倍率法-スモールビジネスの事業価値評価

SDE倍率法-スモールビジネスの事業価値評価

スモールビジネス、中小規模の事業評価、株式評価として、SDE倍率法というのがあります(SDEマルチプル法)。

SDEとは、Seller’s Discretionary Earningsの略ですが、簡単にいえば、オーナーの税引前手残りキャッシュ、です。

日本ではなじみが薄いですが、アメリカではポピュラーです。
ここではSDE倍率法による事業価値評価、株価評価についてまとめてみました。

SDE倍率法の基本
SDE倍率の算定
[SDE倍率とEBITDA倍率の違い comming soon]
[SDE倍率法が日本ではあまり使われていない理由 comming soon]
[SDEっぽいことをする日本のM&A業者 comming soon]